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【日テレ栗原P×NAVICUS対談】SNSの積極的活用でテレビ制作の可能性を広げる!

地上波テレビを取り巻く環境が急速に変わっていく中、視聴者層を広げるツールとして、各種SNSの注目度が高まっています。SNSは地上波テレビの今後に、どのような影響を与えるのでしょうか。
 
SNS運用に特化して顧客企業のマーケティング支援を行うNAVICUSの代表取締役・武内一矢と社外取締役・イセオサムが、クライアントである日本テレビ放送網株式会社の演出・プロデューサー栗原甚氏を迎えて、テレビ業界におけるSNS活用の今後と可能性について、対談を行いました。

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※新型ウイルス感染症防止対策に配慮したうえで、撮影時のみマスクを外しています。

▼プロフィール
日本テレビ 演出・プロデューサー 栗原 甚 氏
1993年日本テレビ入社。情報番組やバラエティー番組で経験を積み、はじめて企画・総合演出・プロデュースした『¥マネーの虎』が大ヒット。『さんま&SMAP』『伊東家の食卓』『ぐるナイ』『行列のできる法律相談所』『踊る!さんま御殿』『中居正広のザ・大年表』など数多くのバラエティー番組を手がける。2013年にはドラマ制作も兼任。国民的ギャグ漫画『天才バカボン』を実写ドラマ化。現在、日テレ3ドラマの宣伝統括&Web/SNS戦略の仕掛け人。話題のビジネス書『すごい準備 誰でもできるけど、誰もやっていない成功のコツ!』の著書でもある。

代表取締役 武内 一矢
2009年に株式会社オウケイウェイヴに入社。Q&Aサイト“OKWAVE”のマーケティング本部マネージャーとして、ソーシャルメディアを中心としたプロモーション戦略を展開。2015年より、株式会社ディー・エヌ・エーにて、アプリゲームユーザー向けのコミュニティ・マネージメント戦略立案、SNSを起点としたプロモーション施策実行を担う。2017年から株式会社トラストバンクに入社し、No.1ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」のマーケティング戦略、プロモーション企画、市場分析等を管轄。その後、2018年7月、SNSマーケティングコンサルを行う、株式会社NAVICUS設立。

社外取締役 イセ オサム
2005年に日本テレビ放送網に入社し、『ズームインSUPER』や『24時間テレビ』にて番組制作に従事。その後、ネット広告代理店のオプトを経て株式会社HALOを共同創業。取締役COOとして広告代理事業、スマホアプリ事業を展開。海外からのアプリローカライズや、『写真で一言ボケて』(以下bokete)などのアプリをプロデュースし、累計1,000万DLを突破。現在はPLAY代表取締役として企業のデジタル活用アドバイザーやRoadie取締役としてboketeのアプリやYouTubeチャンネルを運営。オモロキ取締役としてboketeの事業戦略を立案。ハイブリッドサラリーマンズクラブ合同会社にて働き方改革を推進するオンラインサロンを運営。長野県の御代田町在住。

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日テレとNAVICUSの取り組みが始動


ドラマを観てもらうために、自分たちでSNSを運用

【栗原(敬称略)】僕は2013年にドラマ班へ異動して、バラエティ番組以外にドラマの監督やプロデューサーも務めることになりました。現在は連ドラを話題にするために、WEBやSNSを中心に“仕掛け”を含めてプロモーション施策の統括などを担当しています。当時のドラマは、初回放送までに宣伝予算を全部使い切ることが多く、もし第2話以降に話題になりそうな火種(ひだね)を見つけても、“ブースト”をかけるための有料広告を打つことができないという悩みがありました。

そこで「予算が無いなら、自分たちでPRすればいいじゃん!」とポジティブに考えて、ドラマ班の中でSNSを使った独自の宣伝方法を試し始めたんです。すると、少しずつバズを生むことができて、だんだんチーム体制も整い、ドラマ班のSNSは充実していきました。試行錯誤しながらトライ&エラーを続けて、発信力のあるアカウントを自分たちで作ることができたんです。

一方、日テレではドラマ班に比べて、バラエティー班のSNSは発展途上でした。とにかく地上波で高視聴率を獲るための番組制作に没頭しているため、実は、SNSは苦手というスタッフが多いんです。ましてや自分の番組が、数あるSNS(Twitter、Instagram、TikTokなど)の中で、どれが適しているのかなど分かるはずがありません。そんな状況を変えたいと思っていた時に、「そろそろ本格的にSNSに力を入れていかねば!」という社内の気運が高まってきたんです。

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NAVICUSとの出会いは、番組のSNS強化がきっかけ

【栗原】約2年半前(2020年の1月中旬)SNSに強い外部の会社と連携して、色々な番組のSNSを強化することになったんです。

SNS強化と言っても、企業のアカウント運用、管理、コンサルを請け負っているなど、さまざまなSNS運用の会社があります。そこで、評判の良い会社やオススメの会社を多方面にリサーチし、大小400近くあるSNS運用の会社の中から日テレにとって最適な会社を徹底的に探しました。テレビ業界は商品を販売する企業のSNS運用とはまったくコンディションが違うので、一緒にやるためには、テレビの文脈を理解している人が良いと考えていました。そこでたどり着いたのが、イセ君です。

当時、イセ君が日テレ出身ということは知らなかったんですが、打合せしていく中で「この業界のことを非常によく理解している」という印象を受けました。テレビ番組の作り方や放送されるまでの流れがわかっているので、番組とSNSの相性も含めて、何を発信すれば良いかを一緒にブレストできたんです。実は、武内くんも某局の公式SNSで「中の人」を担当したことがあると聞いたので、イセ君と武内くんに賭けてみようと思い、一緒に仕事することを決めました。

【武内(敬称略)】栗原さんとの最初の打合せで感じたのが、他局との取り組み方の違いでした。他局では、番組内容やコンテンツはすでに決定していて、それを「いかに面白く取り上げるか」という、見せ方の部分にフォーカスしていたんです。

一方で、栗原さんとの取り組みでは、ある意味、番組の内容自体に踏み込むようなディスカッションをすることができて、例えばSNSでアンケート調査をしたり、視聴者からネタを募集するといった番組企画にも反映させたり、事前の盛り上げ施策としてSNSを積極的に活用してキャンペーンを実施するなど、とにかく色々なことをやりました。一歩踏み込んで出来ているところがすごく面白いな、と思いながら取り組ませてもらっています。

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一歩踏み込み、視聴者を巻き込む施策が成功体験に

【武内】まずは、SNSに親和性のあるユーザー(視聴者)を獲得したいという戦略があったバラエティ番組『今夜くらべてみました』から一緒に取り組むことになりました。最初は「そもそも何を指標とするのか?」など、ゼロベースから議論しました。
【栗原】「明日、よる9時放送です!」という、いわゆる番組告知を発信する当たり前の使い方ではなく、「もっと他のアプローチ方法で、視聴意欲を高めることができるよね?」という話をしました。ちなみに番組のプロデューサーやディレクターは、地上波のテレビ番組作りに関してはプロですが、「SNSでは、どう発信したら効果的なのか?」ということには疎いので、色々とレクチャーしながら進めていきました。
放送前から期待感を高めるために、一番面白いシーンをネタバレさせる事前ツイートをするとか、ただの番組告知ではなく詳細な内容まで踏み込んでタイムスケジュールをツイートしたり、放送中にワンクリックしてもらえるようなリアルタイム企画をやったり、ゲスト出演者がSNSをやっている場合は、CM中にSNSで「◯◯さんが出るよ」とツイートしたり……。


▼番組の関連ワードでトレンド入りさせた事前ツイートの事例

【イセ(敬称略)】そうですね、色々やりました!
【栗原】実験的な施策も含めて色々な取り組みを試した結果、NAVICUSとの取り組みを通じて、言及量(=ツイート量)が格段に増えました。テレビ番組を制作している人間がSNSを積極的に活用し、視聴者に番組を観てもらうようにするためには、成功体験が一番です。そういう意味で色々な成功体験を共有することができたと思っています。

【イセ】Twitterキャンペーンでは、たくさんのユーザーが参加してくれて、特定番組についてツイートするハッシュタグという枠を超えて、テレビのちょっとした話題に関心のあるユーザーに投稿してもらえる企画や、巻き込み型の施策などもやりました。テレビ番組のSNSって、今まではその番組に興味がある人だけが訪問するという流れが多かったのですが、ハッシュタグ経由で周りの人も巻き込めたのが、実験としても面白かったなと思います。

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NAVICUSとの取り組みで感じたテレビ制作×SNSの可能性

SNSを通じて醸成されるコミュニティが、番組を盛り上げる

【栗原】お二人と仕事をするまでは、番組のTwitterもInstagramも「フォロワーを増やすこと」がKPIだと思っていたんです。でも実際は、放送当日に番組名のハッシュタグで盛り上がって言及量が増えれば、番組視聴につながるということに気づきました。

だったら、番組タイトルでなくても「番組の関連ワードでツイートしてもらえれば、その番組を見てもらえるんじゃないか」と考えて、あるキャンペーンでは毎日趣向を凝らしたハッシュタグを設定してみたんです。そうしたら、今までまったくテレビに興味のない人もたくさんツイートしてくれて、それが次々とトレンド入りして、その結果、視聴率もアップしたんです。

例えば、金曜ロードショーの放送当日に「#何度も見たい映画3選」というハッシュタグでキャンペーンを実施したら、朝からツイートしてくれる人がたくさんいてトレンド入りしました。そのツイートの中には、今夜放送する映画タイトルも入っていて、その結果、あまり映画に興味が無かったユーザーも「今夜は金曜ロードショーを観てみようかな」という視聴アクションを起こしてくれたんです。

▼番組の関連ワードでトレンド入りさせた企画事例

こうやって言及量が増え、Twitter上で話題になれば、それだけでテレビ視聴率も上がることを何度も体感しました。番組名のハッシュタグがトレンド入りすること以上に凄いことだと感じましたし、高額な広告媒体で「お金を使わなくても、Twitter上で話題を起こすことが可能なんだ」と感心しました。そういうクリエイティブを作れるNAVICUSだから、今も仕事をしているんです。

【武内】私たちはそういう空気感を醸成することを「コミュニティマネジメント」と言っています。いわゆる「バズマーケティング」とは、かなり違うものです。

例えば、情報を拡散させて届けることのみを目的にする場合は、バズマーケティングの発想でいい。でもリアルな熱量を持ったクチコミを作るとか、会話を生み出す場合は、そのコミュニティを良い形に醸成していく視点が必要です。SNS運用も、その目線で取り組むのが一つ重要なポイントですね。

【栗原】まさに、SNSならではの空気感ですね!

【武内】そもそも番組って、「こういう内容、こういうコンテンツにしたら、こんなクチコミが起きるだろうな、こういう感想を持つだろうな」という狙いを持って作っていると思います。それを加速させるための施策としてSNSで展開していくので、テレビ番組作りとSNSは地続きな関係だと感じます。

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SNS上でのキャンペーンで、栗原Pが得た気づきとは?

【イセ】これまで一緒にやってきて、印象に残っていることはありますか?

【栗原】日テレ横断のキャンペーンで、大型テレビをプレゼントした企画は印象的でした。よく飲料メーカーが自社のドリンクをプレゼントすることがありますよね。もし日テレがTwitterキャンペーンでテレビをプレゼントしたら、「ついに日テレは地上波テレビを観てもらうために、テレビ本体を配りはじめたー!」という話題が起きるのではと。でも蓋を開けたら、想像より応募が少なかったんです。「55型テレビは大き過ぎて、部屋に置けないよ〜」という反応が多くて……これは想定外でした(笑)

SNSを通じて、自分が想像していた反応と、世の中のリアクションは違うということに気づかされました。それ以降は、Twitterユーザーの投稿に隠された本当の声(=リアルな意見)を聴きながら、気づきの毎日を送っています(笑)

次のキャンペーンでは、早速そんなユーザーの声を参考にして「大型テレビ」ではなく、キッチンやお風呂でも使える「防水小型テレビ」にプレゼントを変更して、キャンペーンは大成功でした!

▼防水小型テレビをプレゼントした企画事例

SNSを活かした番組作りが実現する!?

【栗原】次のフェーズは、SNSをもっと活用した番組作りができるんじゃないかと考えています。例えば、今まで番組HPで受け付けていた質問やアンケートなどを、SNS上だけで展開する。会議で決まったネタ候補の2つで「どっちを見たいか?」という事前調査を実施して、反応の良かったネタはロケをして、悪かったネタはボツにするとか。放送前に番組ファンの声を聴くことで、ユーザー(視聴者)も番組作りに参加している気分を味わえるので、SNSの反応を番組作りに反映させる取り組みは、これからもっと広がると思います。

【武内】その文脈だと、「ソーシャルリスニング機能」がありますね。Twitterの発言を通じた傾聴という意味合いです。

【栗原】Twitterだと、すぐに反応が得られるのもメリットですね。これまで僕は、放送翌日の朝9時に発表される「視聴率」という物差しで反応を見ていましたが、SNSだとどんな人が見ていて、どんな反応かをリアルタイムで知ることができるのが良さだと思います。SNSが主流になる以前は、「2ちゃんねる」がいわゆるSNS的な機能を果たしていた印象です。

【武内】SNSと2ちゃんねるの利用者で共通しているのは、番組を見てその感想や感情を語りたい、人と共有したいということです。「体験が拡張している」状態とも言えますね。単に地上波テレビを観るだけでなく、「どう思う?」ということがSNS上に溢れていて、ファシリテーターなり、ネタを投下する公式アカウントなり、色々な役割があって拡張されていく気がします。

【栗原】自分が思ったことと同じ意見がたくさん出てきたり、一方で違う考えの人もいたり、テレビ自体は1人で観ているけど、実はみんなで観ているという体験を得られるのが、テレビとSNSの相性が良い部分ですね。

【武内】あとは、クチコミは知り合いのものが一番刺さります。知り合いがこの番組を見て、面白いと言ってるツイートを目にすると、ちょっと気になって観てしまうことがありますよね。その連鎖は、今までの地上波テレビ放送だけだとなかなか作れなかったと思います。TwitterやInstagramだと、ソーシャルネットワークでつながっていれば、その人自身に興味がないことも、情報として目に入るので、そういった連鎖も作りやすいです。

【イセ】他のコミュニティに入っているような感覚が得られるかもしれないですね。

テレビ特有の「リアルタイム性」は今後どうなる?

【イセ】テレビは、「リアルタイム視聴」が基本のメディアでしたが、それが関係なくなってくるタイミングはいつ頃来ると思いますか?

【栗原】個人的には、早ければあと1年、遅くても2年半くらいで到来すると思います。3〜4年前までは、TVerで番組が観られるようになるとは思っていなかったでしょ?日テレは「見逃し配信」以外に、かなり前から「リアルタイム配信」を試験的に始めていましたが、結果的にそれが波及し、今では利用者が急増しています。

だから、いずれTVerでの視聴数も視聴率に加算されるようになる、と個人的には予想しています。ちなみにスマホを持っている人は非常に多いので、大多数の人がいつでもどこでもテレビを観ることができます。その際に、スマホに直接SNSで番組情報を届けることができたら、スマホでテレビを観てもらえるきっかけ作りになるのではないかと。

【武内】TVerを使ってテレビ番組をいつでも繰り返し観られるのが一般的になると、そもそも2回や3回観てもらうことを前提とした番組作りも可能になっていきそうですね。例えば、すでに映画であるように、最後まで観てネタバレした上で、もう一回観たいと思わせる仕掛けをするなども面白そうです。これからが楽しみですね。

テレビとSNSを連動させて取り組んでみたいこと

SNSをきっかけとした「双方向性」を活かした番組制作

【武内】個別の施策も面白いですが、SNS運用を通じてテレビメディアの民主化に関われているという面白さを感じています。

テレビは作られたものを届けるという、一方通行性のメディアというのが、戦後日本におけるテレビ番組のスタイルだったと思います。それに対して今は、SNSで視聴者の反応がよりリアルに見える状態です。制作側がそこに投げかけるとリアクションがあって、その結果、ときには番組が中身を変えたり、あるいはユーザーの反応と番組をセットで楽しんだり…コンテンツ自体に一般生活者が「触れられる」状態になっていると思うんです。エンタメの選択肢が増えた中で、テレビがより面白くなる一つの形なのかなと感じていて、この「双方向化・民主化」というワードで、なにか型が作れると面白いですね。


SNSを使って、次の放送までの一週間も楽しめる番組作り

【栗原】小さい頃、僕の家にはテレビが親の寝室にしかなくて、一週間に一回(土曜夜8時から1時間)しか観ることが許されませんでした。だから放送が終わると、一週間後がすごく待ち遠しかったことを覚えています。そういった経験から、これから番組を作るなら、放送直後から翌週の放送までの一週間、SNSを使って毎日楽しめるコンテンツを配信する、かなり壮大なエンターテイメント企画を実現したいですね。

例えば、進行中のネタの状況がわかる最新情報や放送当日に番組を2倍楽しむための予習動画など、YouTubeやTikTokを使って放送が無い1週間を楽しみながら、一番のピークを番組の放送タイミングに持っていけるような企画です。いろいろなSNSメディアがあるので、地上波テレビとSNSをうまく連動させながら、今までにない新しいスタイルの番組を作れるかもしれない……と考えています。

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「SNSの積極的活用でテレビ制作の可能性」をテーマに展開された今回の対談はいかがでしたでしょうか?
リアルな熱量を持ったクチコミを作ったり、会話を生み出す場合は、そのコミュニティを良い形に醸成していく視点が必要です。SNS運用も、その目線で取り組むのが一つ重要なポイントです。
私たちはそういう空気感を醸成することを「コミュニティマネジメント」と呼んでいます。
NAVICUSでは、コミュニティマネジメント職、SNS運用担当の採用も受付中です。
ご興味のある方は、ぜひご連絡ください!

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